白昼の完全犯罪
1968年(昭和43年)12月10日の雨の朝、東京都府中市で日本の犯罪史上もっとも有名な現金強奪事件が発生しました。東芝府中工場の従業員ボーナス約3億円を積んだ信託銀行の現金輸送車が、白バイ警官を装った男に制止されたのです。
男は「車にダイナマイトが仕掛けられている」と告げ、車体の下を覗き込みました。直後に白煙が上がると「爆発するぞ、早く逃げろ」と叫び、行員たちが避難した隙に現金輸送車ごと走り去ってしまいました。煙は発炎筒による偽装工作であり、暴力を使わず死傷者を一人も出さずに大金を奪い去った鮮やかな手口として語られています。
語り継がれる未解決の謎
現場には偽装白バイや発炎筒など多くの遺留品が残されていたにもかかわらず、犯人の特定には至りませんでした。大規模な捜査が続けられたものの、1975年に刑事訴訟法上の公訴時効が成立し、事件は真相不明のまま迷宮入りとなりました。
奪われた紙幣の番号は公開されていたものの、使われた形跡がほとんど見つからなかった点も謎を深めています。鮮烈な手口と完全犯罪としての結末から、現在でも小説や映画、都市伝説のモチーフとして数多く取り上げられ、昭和を代表する謎多き事件として語り継がれています。




